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「犯人って言ったって…七海先生が変装していたって言っていたし…」
「その前に、犯人と言うからには、あれは殺人事件だって言うのかな?」
 教室に残された5人は、先ほどと同じように1つの机で、額を寄せ合うようにして話し込んでいた。
「たぶん、もしもあれが七海先生の変装ではなく、死体も本物であるなら、犯人は誰か、ということを言いたかったんじゃないかな」
 リュウの発言に、そんな無茶な、とキンタが天井を仰ぐ。
「でも先生のことだから、そういう場合でも成り立つようにはしてあるんだろうね」
 キュウは少し高揚しているようだ。
「殺すほどの動機があるか、って事だよね。昨日の会話からすると…」
「となると、完全否定した2人は、何か隠し事をしてるってことだよな」
「でも、皆『言い争っていた』というのは否定してたし…」
 ねぇ、とカズマがパソコンから顔を上げる。
「最悪を考えると――。各自には殺人に至るまでの動機がなくてもさ、例えば、他人の――団先生とか、DDSとか、そういったもののために犯行に及んだ、というのもあるよね」
「…オメー、さらっと、とんでもねぇ事言うな…」
「だから、最悪、だよ」


「ところで、七海君」
 コーヒーの瓶を手に、片桐が振り向く。休校日、講師室も他に人影はない。
「さっき、明日までに犯人を見つけてくるよう言っていたけれど、そんなシナリオ、あったかしら?」
 今回に関しては、七海が出した案に、団が悪ノリした、といってもいい。元々、団が行うはずだった補講が、彼の急な出張により代行か中止か、と言う話が出たときだった。それが決まって実際に動くまで、わずか1時間。真木が授業を行なっている間、本郷が運転する車のトランクに七海が隠れ、DDSの外に出る。本郷はDDCに寄って大塚優衣――実はDDCの探偵――に了解を得て、一方、七海は変装をして『大塚優衣』として、再びDDSに現れたのだ。
 一番の目的は録音機器の性能実証。子供の声を録る、ということでQクラスに協力してもらうのは予定通りだったが、それを七海が「普通じゃつまらない」と言い出したが故の結果だ。だから、事件そのものについては、警察がいないと言う事の不自然さに気がつくか、程度だった。彼らが自分達を疑い、話を聞きに来ないことには実証は不可能だったが、その事については本郷から『保証』をもらった。やはり、専任講師の言葉には説得力がある。
「ん?いや、その場のノリで言っちゃたんだよねぇ、あれ」
「え?」
 勢いよく流れる粒子の音に、慌てて手元に視線を戻す。お茶を飲んでいた真木が、軽くむせる。
「というわけで、今から会議。さて、誰が犯人でしょう――はい、本郷」
 情報番組のリポーターよろしく、ボールペンを突きつけてる。本郷は、諦めとも取れるような、しかめっ面で、口を開く。
「…お前以外に誰がいる」
「俺が犯人なら、いつ、どうやって?」
「鬼首博士とお前に会った『大塚優衣』は本物だ。だが、次に真木先生に会うまでに1時間、タイムラグがある。その間に、彼女をどこか閉じ込めるなりして、入れ替わる。そうして、他の人間と会い、言い争っている所を目撃させることで、容疑者の数を増やした」
 本郷君、律儀だね。ドクター・ドクロの呟きを遮るように、七海が70点、と採点をする。
「だけど、死亡推定時刻が夜中の1時。俺が出た時間の記録は残っているわけだから、何かしらトリックを使わないと、ダメだなぁ。それでなければ――」
 くるりと身体を回転させて、紫乃のほうへ向き直る。
「当直の紫乃ちゃんが共犯というのはどうかな?今からバランタイン持って俺と逃亡劇繰り広げれば、完璧じゃねぇ?」
「却下。バランタインは魅力的だけど」
 にべも無い回答に、肩をすくめ、確かにそれはつまらない、と椅子に座る。
「なんかこう、喉の辺りまで出かかってるんだけどなぁ…。そもそも、何で死亡推定時刻を1時にしたんだ?あぁ、人形が出来たのがそのくらいだったからか…」
 七海の独り言を聞きながら、今からでも旧校舎に行って、別の宿題を出したほうがはるかに効率的だ、という考えが本郷の頭を過ぎった。視線が合う。
「――ダメだ。それじゃぁ、俺が楽しくない」
 特に、このような状況において、七海は本郷の思考パターンを熟知していた。他の3人は、何の話かと顔を見合わせている。
「お前の道楽のために、時間を割くほどの余裕があると思っているのか」
「本来、中止になる予定だったんだから、別にいいじゃねぇか」
「七海ちゃん、本郷君怒らせたら、バランタインおあずけになっちゃうよー?」
「いいんだよ、それは。忍び込んで、って言ってあるんだから、本郷に拒否権は無い」
 片桐が止める間もなく。講師室の雰囲気は一変した。


「でもよ、本郷の時計が違うってのは、怪しいよな。最後に会ったのも、アイツなんだし」
「一番怪しいのは、片桐先生だと思うけど…」
「その前に、死亡推定時刻が1時って、信用していいのかな?」
「検死をしたのは、真木先生なのかしら…」
「…でも、人形でしょ、あれって」
「だから、それを考えちゃ、ダメなんだって」
 犯人が分かればトリックが分かるのか、トリックが分かれば犯人が分かるのか。どちらにしろ、教室で話し合っていても何も出てこないので、現場に向かおうと外へ出る。
「どうしたの、リュウ。浮かない顔をして」
「うん…七海先生は、何を考えているんだろうって」
「何を?だって、これ、授業だよ?」
「そうなんだけど…」
 肉襦袢の件が引いているのだろうか。難しい顔をして考え込むリュウを見て、なんとなく、キュウはそう思った。




050528
Qクラスを久しぶりに書きたくて、というのと、DDSの講師陣が容疑者になるほど厄介なものはないかなぁ、と思ったので書いてみたら、随分遠くに行ってしまいました。うーん
今回は、本郷&遠山と七海&リュウの王道師弟(笑)以外の組み合わせを、といろいろ試した結果、こんな感じになりましたが、いかがでしょう?キンタとドクター・ドクロの組み合わせは面白いかも、と思っているんですが。それにしたって、何で私の書くドクター・ドクロは常に実験台を探しているんでしょうか?私の中では、DDS最強は彼です
本郷先生のバランタイン30年は頂き物、17年は自前設定。何かいい事があった時とかに飲んだりする。…本郷先生にとってのいい事って何だろう



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