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「あぁ?俺が、女と密会してた?」
「いえ、密会とか、そんなんじゃなくて…密会といえばそうかも…」
 カズマが七海を捕まえられたのは、給湯室だった。インスタントコーヒーを適当に入れたカップに適当にお湯を注ぎ、一口飲んでミルクを足し砂糖を足しまた味見しては、と見る間にそれはコーヒーというより怪しい液体に変わっていった。
「今朝、僕とメ――美南さんが発見した、女性です。昨日、特殊メイク室の前で七海先生と言い争ってるのを、僕見たんです」
「俺がぁ?」
 目をまん丸にして、七海は自分を指差す。
「いや、俺は会ってねぇよ。見かけたけどな」
「え?」
「昨日、DDSの校舎内を歩いてるのを。俺はその時、外にいたからガラス越しにだが、間違いないと思うぜ?」
「え?でも、僕…」
 まぁまぁ、と宥められる。子ども扱いされてる気がして、少しカチンときた。
「俺は、確かにその女性を見かけた。でも会っちゃいない。ただ、これは俺の『自白』だけであって、証拠はねぇな。反対に、鳴沢の言ってることも、証拠はない。もし、俺を容疑者にしたいのなら、証拠がないと。基本だろ?」
「えぇ、まぁ」
 うなづいてから、しまったと、口をつぐむ。確かにこんな質問をするのは、そう取られて当たり前だが、はっきり言われると答えようがない。黙ってしまったカズマに、七海が逆に質問をしてくる。
「ところで、お前が見た俺、何て言ってたの?」
「えぇと。そう言うならこっちにも考えがある、って」
「なるほどね」
 でも俺、フェミニストなんだけどな。よく分からないことを呟いて、七海はカップを手に取る。取っ手にはサボテンのキャラクターがしがみついていた。彼にとってのサボテンとは、何なのだろう、と全く関係の無い思考が過ぎる。
「まぁ、さっきも言ったけど、証拠だな。お互いの目撃論だけじゃ埒が明かない。俺も忙しいから、とりあえず、ここはこれで終わり」
 言うだけいって、さっさと出て行く。
「あぁ、そうだ。その見かけた女性な。何か、医務室あたりをうろついてたぜ」
 振り返りもせず、告げた。
「…これって、逃げられた、って事なのかなぁ」
 実際の事件の容疑者とはまた勝手が違うが、簡単に言いくるめられすぎやしないだろうか。そんな自分に、苛立ちを覚えつつ、カズマはパソコンに「医務室」と打ち込んだ。






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