TOPcreation > I SAW THAT YOU MEET HER YESTERDAY 1 2 3 4 5 6 7 8 9



「うぃーす」
 最初に顔を見せたのは、七海だった。5人は、ギョッとして、慌てていつもの席へ戻る。
「あの、先生――」
 キュウの発言はすぐに止まった。開いたままのドアから、本郷、片桐、ドクター・ドクロ、最後に真木、と話題の人物が次々に入ってきたからだ。4人はそのまま、教室の後ろへ移動する。ちょうど、授業参観のようだが、これほど緊張を強いられる授業参観は他にはないだろう。それを気に留めることもなく、七海は、何だ、と尋ねる。
「その…事件のほうは」
「分かったか?調べてたんだろ?」
 逆に、質問をされ、いえ…と力なく答えるキュウを一瞥し、七海は後ろへ声をかける。
「――だってよ。来週も、補講組んだほうが良いか?」
「それは我々が決めることではない」
 本郷の声が返ってくる。その会話を聞いて、リュウは、メグとカズマを見て小さく声を上げる。
「警察――!」
 え、と首をかしげる4人に、七海は、やっと気がついたか、とため息をつく。
「あのなぁ、いくらここがDDSっていったって、日本なんだぜ?死体が見つかれば警察が動くし、第一発見者に話を聞きに来る。それがない、って事は?」
「あれは、死体ではなかった…?」
「そーゆーこと」
「もしかして、これが補講なんですか?!」
 勢いあまってキュウが、立ち上がる。以前にもあったのだ。事件と思っていたものが、試験だった、というのは。その時の『死体』は、ドクター・ドクロの作った『教材』だった。そもそも、入学試験からしてそうではなかったか。
「警察が来ない、ということに早く気がつけば、俺らを容疑者にしなくても済んだのにな」
「え、でも、昨日、僕らが見た女性は…」
「ありゃ、俺だよ」
 え、と別の意味で固まった5人を見て、七海はにやりと笑う。
「俺らは結構、ヒントを言っていたはずだぜ?ドクター・ドクロは、『七海相手に言った』って言った。俺は『ガラス越しに見た』――自分と会うことは出来ないからな。正確には、ガラスに映った自分は見た、ってことになる。優しい本郷先生なんか『変装』というヒントまで与えてくれたのに」
 カズマが手を挙げる。
「じゃぁ、僕が見たのは――」
「あぁ、俺の相手だけ、片桐先生にやってもらった」
 俺は、変装を解くのは瞬時に出来るけど。
 だから、七海と真木の間に、1時間近く空白の時間があったのか。片桐が変装を解き、七海が再び変装するまで。
「お前らがよく遭遇する『警察がすぐに来れない』ところじゃないんだぜ、ここは」
 うんうん、と後ろでドクター・ドクロの頷く声がする。他の3人の表情を見るのが怖くて、キュウ達は振り返らない。そういえば、全員が『被害者』と言い争いをしている『容疑者』を目撃しているなんて、出来すぎている。しかも、その時間、その場所を通るように仕向けたのは団だった。リュウは全身から力が抜けていくのを感じた。
「じゃ、来週も補講、というのは一応覚悟しとけ。それから、せっかくだから今回の『被害者』を『殺した』のは誰か、ってのは明日までの宿題な」
「え?」
 素っ頓狂な声を上げた5人に、以上、とだけ言って七海は出て行った。後ろで成り行きを見ていた4人が続く。


「で?どうだった、ドクロちゃん」
 講師室について、いつもとは違い円陣を組むように椅子を並べ、そう切り出したのは七海。
「うん、そうだねぇ。半径3mぐらい、ってところかな」
 彼の手の中には、小さな骸骨、サボテンのマスコット、ボールペン、ペンダントトップ、時計。
「感度はいいんだけどね。後は、移動中のノイズをどうにかしたいなぁ。」
 時計の裏の小さな円状の金属を外す。超小型録音機器。今回の『補講』は、この性能を試すためでもあった。むしろ、これが本来の目的、と言っていい。ドクター・ドクロはポケットから小さな箱を取り出し、外した録音機器をセットして、スイッチを押す。先ほどの、2人の会話が流れてくる。
「ねぇ、七海君。犯罪をほのめかす、って何を言ったの?」
「別にたいしたことじゃねぇよ。今夜、お前の部屋に忍び込んで、バランタインの30年と17年を飲み干してやる、って言っただけ。犯罪にもならないだろ」
「それは、不法侵入、というんじゃなかったかしら?」
「本郷に対しては無効」
 きっぱり言いのけた七海を押しのけるように、ドクター・ドクロが、ねぇねぇ、と近寄ってきた。
「本郷君、30年モノ持ってるの?今度、私もお邪魔していい?」
 じゃぁ今日は本郷ん家で飲み会だー。盛り上がる2人を、効果はないと分かりつつもじろりと睨みつけ、本郷は他の録音機器も慎重に外す。1時間の充電で10分ほどしか持たないが、この大きさで、ここまで感度があるのは、奇跡的にも思える。
「それにしても、一対一で尋問される、というのはさすがに緊張しますね」
 隣に座った真木が声をかけてくる。
「すみません、真木先生まで巻き込んでしまって」
「いえいえ、楽しかったですから。団先生も、面白いことを考えてらっしゃる」






TOPcreation > I SAW THAT YOU MEET HER YESTERDAY 1 2 3 4 5 6 7 8 9