「君がここに来るのはめずらしいね」
こぽこぽとお茶を淹れながら――そういえば、ここに行くといつもお茶が出るってキュウが言ってたな――ドクター・ドクロは言った。テーブルの上には、リボンをつけた頭蓋骨と、さらにその上に、何の冗談か小さな頭骸骨がちょこんと乗っていた。亀じゃあるまいし。
「えぇ。まぁ、その――」
意気込んできたものの、さてどう切り出そうか、と悩んだ結果、キンタは直球勝負に出ることにした。
「ドクター・ドクロ。今朝の事件なんすけど――あの女性と、昨日会ってましたよね?」
ガシャンッ!ティーポットの蓋がカップの中へ落ちる。
「あーあ、やっちゃった。やっぱりこれ、勝手が悪いなぁ」
蓋をつまみあげて、キンタのほうへ顔を向ける。
「今朝の事件って、屋上からの転落死ってヤツ?あぁ、私も見たけど、酷かったねぇ…顔の判別にはまだ時間がかかるよ、あれは」
「はぁ、そうすか…。じゃなくて、ドクター・ドクロ、昨日、会ってましたよね、その女性と!」
「今朝の事件の仏さんと?私が?ないない。一体、いつ?」
「昨日の、授業が終わった直後。俺、見たんですよ。貴方と、その女性が言い争いしているのを」
えぇー?ドクター・ドクロは腕を組んで天井を仰ぎ、しばらく唸っていた。
「私が昨日会った女性といったら、片桐先生だけなんだけどねぇ…。ちなみに、何を言い争っていた?」
「え?えーと、何の根拠があるのか、とか、そんな感じ…」
「何の根拠、何の根拠…」
呪文のように繰り返し、部屋をぐるぐる回り、あぁ!と手を打つ。
「それはねぇ、七海ちゃんに言った言葉だ。ほら、ドクター・ドクロ特製肉…スキンスーツ、あの3サイズがね、どこそこの誰それのものじゃないかって。でも、誰それの、って言い出す七海ちゃんのほうが怪しいよね?」
「や、怪しいって、何が」
あまりにも突飛な話に、キンタは思わず、普通に聞き返す。
「その、誰それ、がグラビアアイドルとかだったら、3サイズも公表されているだろうけど、まさか駅の売店のおねーさんのまで公表されてるなんて、考えられないし。でも七海ちゃんなら、人の3サイズぐらい、パッと見で分かるかもしれないけれどねぇ」
「はぁ…そうすね…」
そんな駅の売店のおねーさんがいるなら是非会いたい、と上の空で返事をする。
「ところで、遠山君。君って、健康体?」
これまた突拍子もない質問に、キンタは、はぁ、と頷く。ドクター・ドクロの眼鏡が怪しく光る。
「今ねぇ、新薬の実験体を探してるんだよ。本郷君も七海ちゃんも慣れちゃって、弱いやつだと効果が出なくてさぁ。安全性についてはバッチリ保障するし、何なら…」
「し、失礼します!」
がたがた、と音を立てて椅子から立ち上がり、キンタは部屋を飛び出した。