TOPcreation > IT IS WONDERLAND THAT GOT



 森を抜けると、一軒の家がありました。うさぎの耳の形をした屋根に毛布をふいてあります。本郷は、変な家だ、と思いましたが、その家の前に置かれたテーブルを見つけてさらに眉をひそめました。
 丸い大きなテーブルに、3人。いや、1人と2匹、と表現した方が良いでしょう。1人は人間の男性で、背の高いシルクハットをかぶっていました。後の2匹はウサギとネズミです。ウサギはその人間と同じぐらいの大きさがありました。さらに服を着ていたのです。先ほど会ったグリフォンとは別の意味で、奇怪な図でした。ネズミはそれなりの大きさ(それでも十分大きいのですが)、男のシルクハットの上で丸くなっていました。その大きなテーブルにはいくつもの席があり、それらの前にカップを初めとした食器が並んでいましたが、座っているのは3人だけでした。
 どうしようか佇んでいる本郷に声をかけたのは、ウサギのほうでした。
「やぁ、これはこれは、珍しいお客さんだ!」
「服が珍しいね」
 男はそれだけ言って、カップを傾けました。確かに、彼らの服装からすれば、そうかもしれませんが、本郷からしてみれば彼らの服装こそ珍しいと言えるのです。まるで、昔のイギリス人のような――。
「そんなところへ突っ立っていないで、こっちへ来たらどうだい?」
「はぁ…」
 勧められるまま、男の隣の席に着いた本郷は、目の前のカップを見て、顔をしかめました。ひどく汚れているのです。もうずっと洗っていないようで、紅茶がこびりついていて――。
「ここにお客さんが来るのは2度目だね」
「最初は女の子だった」
 ネズミが眠そうに言いました。女の子。それは紫乃のことだろうかと思い「その少女の行き先は分かりますか?」と聞きました。
「森に行っちゃった」
 ネズミはそれを言ったきり寝息をたて始め、ついにはシルクハットの中に――上に穴が空いているのでしょうか――落ちてしまいました。本郷は、他の1人と1匹に、犬を見なかったかと聞きました。
「探し物のヒントは」
 うさぎが言いました。
「そいつはいつも、1つ変えている、ということだ。それは常に違う1つで、気がつけば全部が違う」
 どういう意味だろう。考え込む本郷に、今度は男が言いました。
「君は帽子は被らないのかい?」
「いえ…」
「そうか。欲しかったらいつでも言ってくれ。私は帽子屋なんだ」
 帽子屋。帽子屋とうさぎとのお茶会。どこかで、見たか聞いたかした場面です。思い出そうとしているうちに、帽子屋がお茶をカップに注ごうとしていました。
「あの」
 それを遮って、本郷は言いました。
「迷惑でなければ、洗ってきましょうか?――その、情報をいただいたお礼に」
 さすがに、こんなに汚れたカップでお茶を飲む気にはなれませんでした。
「迷惑なんてあるものか!」
「でも数が馬鹿にならない」
 大きなテーブル一杯に、ポット、カップや受け皿、ナイフ、フォーク、スプーン…。数が多いから洗わないのかと思ったのですが、彼らはまるで義務のように『お茶会』を続けているようでした。
「街まで用事があるのなら」
 ウサギが歌うように言いました。
「買って来るのも賢明だ。なになに、お代は後払い。三月うさぎの家へと言えば、どんなものでも手に入る。なにせここはお茶会だから。なんどき尋ねてもいないなんてことはありえない」
「街へはどう行けばいいのですか」
「森をまっすぐ突き抜けて」
 シルクハットの中から声がしました。



<食器を洗う>
<食器を買いに行く>



TOPcreation > IT IS WONDERLAND THAT GOT