情報収集の目的もあって、本郷は街へやってきました。いたるところに整然と露店が並び、整理された道の先には城が見えます。19世紀のヨーロッパの城下町というのは、こういうところなのか、と思いながらも、それが違うことも分かっています。なぜなら、その当時に絶対ないであろうものがあちらこちら混ざっていたからでした。そもそも、町中を歩いているのは、人間ではないのです。
露店にはいろいろなものが売っていました。もちろん、食器も。さて、何をどのくらい買ってくればいいのだろう、と本郷はテーブルの上にあったものを思い出そうとしていました。
「本郷君?」
少し遠慮がちにかけられた声に振り向けば、紫乃が立っています。
「よかった、会えて」
ほっとしながら寄って来て、何をしているの、と尋ねてきました。
「お茶の道具を買いに来たんだ」
「お茶?」
「シルクハットをかぶった男と――」
ウサギがお茶を飲んでいた。そう言おうと思ったのですが、果たしてこんな突拍子もない話、信じられるだろうか。しかし、今の状況を見れば、露店で声を上げているのは大きな鳥だし、それもありか、など続けようとしていると、先に紫乃が「帽子屋と三月ウサギのお茶会?」といいました。
「…確かにウサギだったが。あれは三月ウサギというのか?」
「見ていないから確かと言えないけれど、ほら、アリスの」
「アリス?」
「不思議の国のアリス……本郷君、知らない?」
「あぁ」
確かにその本を読んでいる姿と言うのも想像できないわね、と、紫乃はあらすじを話しました。最初の感想は「夢オチか」という的確ながら愛想のないものでしたが、それでもこんな場面はなかったと話すと、どことなく諦めたような表情が浮かびました。
「多少、気になるが、何を今更、という感じだな」
「で、何で本郷君は食器を買いに来たの?」
「…その場の勢いとでも言えば一番いいのかもしれないが」
そのお茶会での出来事を話すと、紫乃はくすりと笑って、律儀ね、と言って「これなんてどう?」と飾り敷を手にしました。
「そんなものはなかったから、必要ないだろう」
「おぉい!」
その時、聞きなれた声が響き渡りました。本郷と紫乃はもちろん、他の動物達も一斉に振り返ると、七海が駆け寄ってきたところでした。
「なんだ、2人してこんなところで買い物かよ」
息せき切って、七海は少し膨れっ面で言いました。
「私達も今、会ったところなのよ」
「お前、どこにいたんだ」
「そーなんだよ、聞いてくれよ!半魚人がいてさ、自慢しようと思ったんだけど…」
ぐるりと辺りを見回して、これじゃ自慢も何もないよな、と呟きました。
「それよりも、これからどうする?」
紫乃の問いには、2人とも答えられません。すると、食器屋の鳥が口を挟みました。
「迷ったなら、裁判所に行けばいい。判決をくれるだろう」
「裁判所?」
「ほら、そこだよ」
振り返れば、この辺りではかなり立派な建物がありました。
「食器は届けるよ。行っておいで」
ぱたぱたと羽根を振って、鳥は言いました。
「…何、食器って」
「…気が向いたら話す」
3人は裁判所へ向かいました
<裁判所へ>