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「右…right…明かり…light…」
 紫乃は珍しく独り言を言いながら森の中を歩いていました。そう暗くはありませんが、どことなく陰気な感じがあって、否応なしに足も速くなります。
「一文字変わるだけでも、随分と違うのね」
 本来、チェシャ猫は――何回か登場したものの――三月ウサギの家かキチガイ帽子屋の家か、を教えてくれるものでした。今回は、どちらも目的地にしては抽象的過ぎます。明かりがある。それは何の明かりなのかしら。
 そう考えながら歩いていると、前方が次第に明るくなり始めました。声も聞こえます。走るように森を抜けると、そこは大きな町でした。露店がずらりと並び、とても賑わっています。しかし、そこにいたのは人ではありませんでした。動物です。動物が、二本足で立って喋っているのです。驚くべき事でしょうが、今までの事を考えると、特に珍しくもありませんでした。ただ1人、その中で目立つ人物がいました。
「本郷君…?」
 食器を並べた露店の前に立っていた本郷が振り返ります。
「よかった、会えて」
 何をしているのかと問えば、お茶の道具を買いに来たとのこと。詳しく聞くと、どうやら彼は帽子屋と三月ウサギのお茶会に出会ったようです。ただ、どうも不思議の国のアリスとは違うようです。チェシャ猫だってそうだったのですから。
「で、何で本郷君は食器を買いに来たの?」
「…その場の勢いとでも言えば一番いいのかもしれないが」
 そのお茶会での出来事を話すと、紫乃はくすりと笑って、律儀ね、と言って「これなんてどう?」と飾り敷を手にしました。
「そんなものはなかったから、必要ないだろう」
「おぉい!」
 その時、聞きなれた声が響き渡りました。本郷と紫乃はもちろん、他の動物達も一斉に振り返ると、七海が駆け寄ってきたところでした。
「なんだ、2人してこんなところで買い物かよ」
 息せき切って、七海は少し膨れっ面で言いました。
「私達も今、会ったところなのよ」
「お前、どこにいたんだ」
「そーなんだよ、聞いてくれよ!半魚人がいてさ、自慢しようと思ったんだけど…」
 ぐるりと辺りを見回して、これじゃ自慢も何もないよな、と呟きました。
「それよりも、これからどうする?」
 紫乃の問いには、2人とも答えられません。すると、食器屋の鳥が口を挟みました。
「迷ったなら、裁判所に行けばいい。判決をくれるだろう」
「裁判所?」
「ほら、そこだよ」
 振り返れば、この辺りではかなり立派な建物がありました。
「食器は届けるよ。行っておいで」
 ぱたぱたと羽根を振って、鳥は言いました。
「…何、食器って」
「…気が向いたら話す」
 3人は裁判所へ向かいました



<裁判所へ>



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