舞い散る枯葉は、せっかく掃除した地面をたちまち埋め尽くします。七海は箒を投げ出して、座り込みました。掃除もいやになりましたが、コウタロウのことも心配でした。それにも関わらず、妙に眠気が襲ってくるのです。
ふいに、森の方から、ガサガサッと音がしました。何かがいるようです。
「コータロー?」
しかし出てきたのは鳥のようなものでした。ようなもの、というのは、今まで見たことがなかったからです。身体はダチョウぐらいに大きいのですが、首と足は短く、ずんぐりとして、翼は退化しているようでした。
「…何だぁ?」
「何だとは失礼な。私が、ドードー鳥以外の何に見えるんだ」
鳥が喋ったことに、七海は飛び上がらんばかりに驚きました。いえ、実際に飛び上がったのです。
「鳥が!喋った!」
「喋ってはいけないのかい?君が喋れるのだから、私も喋れる。それが何かおかしいか?」
ドードー鳥はムッとして言い返します。七海は、新種の鳥かしら、と興味ぶかく観察しました。自分が喋れるのだから相手も喋れると思うのは間違いだと思いましたが、ドードー鳥の機嫌をとるために素直にあやまりました。鳥は一つ頷いて、「いけない、コーカス・レースが始まる」といいました。
「コーカス・レース?」
「さぁ、急いで!」
七海の腕を掴んで、ドードー鳥は走り出します。とは言っても、スピードは遅く、七海は普通に歩く程度で十分でした。しかし、しっかりと掴まれた腕は振りほどくことができません。
「え、あの、何でオレ?」
「時間がないから!」
「でも、コーカス・レースって知らないんですけど!」
「なんと!知らないって?それは問題だ」
問題だといいながらも鳥は説明しようとはしませんでした。やがて、前方に垣根が見えました。ドードー鳥は避けようともせず、その中へ突っ込みます。小さな枝や葉が顔に当たり、思わず七海は目を閉じました。
すると、腕を掴んでいた力が急になくなったのです。恐る恐る目を開けると、鳥の姿はどこにもなく、七海は1人、高い木に囲まれた場所にいました。森にしては明るく、出口付近なのでしょうか。
足を踏み出した途端、何かに躓きました。
「いてっ」
見ればそれは丸太でした。不自然に置かれている気もしましたが、喋る鳥に比べればなんて事はありません。それよりも痛い、ということは、夢ではないのだろうかと、その方が気になります。七海は立ち上がり、ともかく茂みの外を確認しようと、歩き始めました。
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