TOPcreation > IT IS WONDERLAND THAT GOT



 一瞬、視界がぶれました。次の瞬間には、本郷は1人、よく分からないところにいたのです。よく分からない、というのはそのままの意味で、大昔の神殿のようでもあり、中世ヨーロッパのきらびやかな城のようでもあり、はたまた宇宙のようでもあり、早い話、実際に行ったことはないけれども、どこかで見たような世界がごちゃまぜになったような場所でした。
「どうした」
 威厳がある声が頭上から降ってきました。さすがの本郷も驚いて(さっきから驚くことばかりです)見上げると、大きな鳥が見下ろしています。鳥が口を利くはずもない。振り返って全身を見て、今度は、あ、と声を上げました。それは鳥ではありませんでした。上半身は確かに鳥――猛きん類のような風貌なのですが、下半身は獣でした。白に近い輝く黄金の毛に覆われたそれは、ライオンのようでした。鳥類の王と獣の王。本郷は名前を知っています。グリフォン。昔の王族達に好まれ、紋章として歴史上にしばしば現れた、空想上の動物です。そう、空想上の――。
「ここに、何か用か」
 やはり喋ったのはグリフォンでした。夢かと思いましたが、何を今更、という気がしないでもありません。さっきから非現実的なことばかりなのです。さっきから。本郷はその言葉で止まりました。ついさっき、そう、ここに来た経由が全く思い出せないのです。グリフォンは本郷が喋ることを待っているようでした。
「――ここはどこでしょうか」
 我ながら間の抜けた質問だと思いましたが、他に聞きようがありません。
「どこにでもなる」
 そういった途端、漠然としていた風景は、ピラミッドが立ち並ぶ砂漠に変わりました。あまりありがたくない場所だな、と本郷が思えば、それはまた姿を変え、広い草原になりました。
「――他に誰か来ませんでしたか?」
 七海か、紫乃か。はたまたコウタロウか。
「この先の家の者に聞けばいい」
 グリフォンが顎をしゃくりました。見渡す限り、草原には何もありません。すると、みるみるうちに霧が立ち込めました。
「何か、有効な手がかりがあるだろう」
 声だけが響きます。五感を澄ませて、変化を知ろうとしました。まず鼻が雨上がりの土壌の香りを捕らえました。耳が鳥の鳴き声を。目が木々を。
 すっかり霧が晴れ、そこは森の中でした。グリフォンは家と言ったはずです。そんなものは見えませんでしたが、本郷は微かに明るい方へ向かって歩き始めました。



<NEXT>



TOPcreation > IT IS WONDERLAND THAT GOT