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「ワンッ」
「うえぇあぁ?!」
 衝撃で目が覚めた七海は、何が起こったのかすぐには判断できなかった。後ろから押されて、額を地面にぶつけたのだろう、ということは分かる。
「七海君、大丈夫?」
 すぐに片桐の声が掛かり、背中に覆いかぶさっていたものがなくなる。土で良かったと起き上がると。
「コータロー!」
 ぱたぱたと尻尾を振る姿は、4日ぶり。思いっきり頭を撫でてやれば、顔を舐められる。視線の先に、片桐の安心したような顔と、さらにその後ろに、本郷の姿。確か、少し前に2人は帰って、自分は掃除当番だからと――。
「こんなところで寝ていたら、風邪をひくわよ」
「え?」
 オレ、寝てた?その問いに、本郷が呆れたように頷いた。
「あぁ、じゃぁ、あれは夢だったんだ。そりゃ、夢じゃなきゃおかしいけどさ」
 1人合点して七海は土ぼこりを払い、改めてコウタロウの頭を撫でる。
「ところで、コイツ、どこにいたの?」
「ちゃんと、飼い主の家にいたの。というか、今までがね」
「縄抜けが得意で、脱走していただけらしい」
 了承を得て連れてきた、と本郷は手にしていたリードを見せた。確かに最初は大人しく歩いていたが、ふと立ち止まったかと思うと器用に縄を抜けて、ここに一目散に走っていったのだった。やはり『コウタロウ』の名を持つものには共通点があるのかもしれない。
「飼い主がいろいろと対策を立てたらしくてね、それでしばらく、コウタロウは脱走できなかったらしいのよ」
「お前なぁ、脱走するなら、一言、そう言わなきゃダメなんだぞ?」
「……」
 何やら言いた気な本郷を他所に、七海は、帰ろうか、と立ち上がった。


 夕暮れの町中を歩く。小さくくしゃみをした。
「やっぱり風邪、ひいたかなぁ」
「玄関先で寝てたもの。今日は、早く休んだ方がいいわ」
「何で、あんなところで寝ていたんだ」
「それが分かんないんだよなぁ。でも、面白い夢、見れたぜ?えーと…不思議の国のアリス、だっけ?何か、そんな感じの話でさ」
 片桐が興味深そうに、一方の本郷は、どこかで名前は聞いたことあるが、という表情で聞いていた。白ウサギ、グリフォン、きちがい帽子屋と三月うさぎ、ドードー鳥、チェシャ猫、公爵夫人、トランプの兵隊とハートの女王…。
「随分と、楽しそうな夢ね。確かに、不思議の国のアリスの登場人物だけど」
「でも、落っこちたり吸い込まれたり、ロクなことなかったけどな。あぁ、でも最後に本郷が魔法使いになってさ」
「魔法使い?」
「そう。豚をイチジクに変えて、次にそれを霧に変えて、今度は霧をコータローに変えた」
「…あぁ、Doubletか」
「そう、そんな事言っていた。何なんだ、それ」
「日本のしりとりと似ている感じだな。一文字を変えて、別の単語を作っていく」
「…で、豚がイチジクになるかぁ?」
「PigのPをFに変えると、Figになる。Figのiをoに変えるとFogになる。FogのFをDに変えると、Dogになる」
「…あぁ!」
 少し考えて、片桐は声を上げた。七海はまだ目が点になっている。本郷は手帳を取り出し、4つの単語を並べて書いた。それを見て、七海も納得したようだ。
「これ、続くのか?」
「遊び自体は、ある単語を別の単語に変えるのに、最短で出来た人間の勝ち、というルールらしいが、続けようと思えば出来るんじゃないか」
 そう言って本郷は、『Dog』の後に、アルファベットを書き込んでいく。Log、Lot、Pot、Pat、Cat、Bat、Mat。
「Logって何だ?」
「丸太。クジ、ポット、パットは…」
「パトリシアの愛称でもあるわね。そして猫、コウモリ、敷物」
 日本語訳を聞いて、七海はしばし考え込み、ちらりとコウタロウを見た。
「これさ、Pigの前にWigを持ってくることも出来るよな?」
「あぁ」
「何だ、そっか」
 何が、という2人の表情に、なんでもない、と笑って答える。コウタロウは尻尾を振って、歩き始めた。




06/08/21
1ページ目から先を真面目にしようか吹っ飛んだ話にしようかで、後者にして見ました(何故)。ですます調って訳がわかりません。たまにはいいかなと思いましたが、もうやるまい(笑)。
Doubletは、私が知ってる限りは作中の知識だけです。
 Dig、Wig、Pig、Fig、Fog、Dog、Log、Lot、Pot、Pat、Cat、Bat、Mat
 遺跡、カツラ、豚、イチジク、霧、犬、丸太、くじ、ポット、パット、猫、こうもり、敷物
どこかしらのシーンに1つは出ている…はずです

真面目にしようと思ってやめたのは、ちょっと重くなりそうだったからです。実はWななみに続き2敗目。





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