I DIG SOIL
男は穴を掘っていた。
深く深く。
空と同じく黒い穴。
「くそっ」
何も見えない地面に向かって、何度めかの独り言。
「なんでこんな…!」
あの二人さえ来なければ。
男は見張っていた。
人気のない山道の入り口。ライトを消した車に乗って、そこに入る人間を見ていた。
――これで4日目。
もう大丈夫だろう、と肩の力を抜きかけた男を、明かりが照らした。
ぎょっとして振り返れば、車が一台通り過ぎた。昼間はそれなりに通る。山道はハイキングコースにもなっているから、休日であればなおさら。しかし、平日の夜に車が通ったのは4日間で3台目。しかも今回は、男の車を通り過ぎてすぐに止まった。つまりは、山道の入り口で。平日の、夜に。
出てきたのは2人。街灯の下に照らされたのは異様な対比。白と黒。どちらもが違和感のある恰好だった。山道に白いスーツはおかしい。残暑の夜に黒いコートはおかしい。そして、何故2人ともスコップを持っているのだ。
白い男が振り向いた。目があった気がした。黒い男が何事かを喋ったのか、2人は山道を――すぐにそれて斜面を登って行った。
男は焦っていた。
何故、見つからない。
違うところを掘っているのか。そんなはずはない。
「探し物は見つかったかい?」
唐突にかけられた声。返事はできない。反射的に振り向き、上を仰ぎ見る。
スコップを両手にした白い男が、穴の淵に飄々と立っていた。その後ろには――。
男は膝をついた。
白い男の後ろ、黒い男が手にしている袋。それは自分が探していたものではなかったか。
「終わりだ――」
男の呟きは聞こえなかったのか、白い男は「気をつけてな」と手を振って、黒い男は見向きもせずに去って行った。
「と、死体遺棄で自首してきた男がそう話していたんです」
「あのさぁ」
高橋刑事の説明を口をはさまず聞いていた七海が手を挙げる。
「なんでそれでオレと本郷に結び付くの?世界が100人の村だったらの世界じゃあるまいし」
「今の話でお二人以外に思い浮かべる事が出来る人が、まずいないと思います」
「いや、いる。きっといる。警察官がそんなに視野が狭くて」
「それで、何故ここに?」
二人の会話は無視して、本郷がもう一人の刑事であり高橋の上司でもある吉川に訊ねる。
「確かに男の言うとおり、山にはバラバラ死体があったわけです。男が掘っていた場所とは90度、方角が違っていましたけど、焦っていて場所を間違えたんでしょうね。それとは別に――もう少し登ったところにも何かを掘り返した跡があった。警察としては、それが何かをはっきりさせないと男の処遇も決められん、という事です」
あぁ、と七海が納得したように高橋から視線を外す。
「確かに我々はその山へ行きましたし、地面を掘り返しましたが、持ち主の許可を取っています」
あっさりと頷く本郷に、吉川が笑った。
「差し支えなければ何をしていたのか教えていただけませんか?」
それに答えたのは七海。
「死体を掘り返していたんですよ」
12/3/8
ドクロちゃん作製の
いろいろ不具合があって二人して回収しに行ったんだと思います。