I HAVE GOOD FORTUNE
運は自分で切り開くものだ、とよく耳にする。
とはいえ、運の良い悪いはあるものだ。
「アイツはホント、運が悪いよなぁ」
「そうかしら」
薄暗い、しかし陰湿な感じはしないバーでぼんやりすること1時間、カラン、とドアベルを鳴らして同僚がやってきた。それからさらに1時間。席は8割方埋まっている。
「運が良いと思う?」
「かつて、あれだけの事件と関わって1カ月の入院で済んだのは、運が良いってことじゃないかしら」
「言うねぇ――でもさ、誕生日に仕事で」
誕生日に仕事で不在、というのを運が悪いとは言わない。誕生日だから仕事が休みというシステムはない。それ自体ではなく。
「誕生日に仕事で富士の樹海で死体探しって、ついてなくない?」
「名目は家出人の捜索よ。勝手に殺さないで」
「いや、その家出人を生きているうちに無事保護したとしても、だ。探してる途中で絶対見つけるぜ、アイツ。そういうところでは運が良いんだ」
「結局、運が良いってこと?」
「…ってこと?」
うーん、と首をひねる間に、客が一人帰って行った。カラン、とドアベルが鳴る。
「運と言えば、珍しく正月に初もうで行ってさ、おみくじ引いたんだよ。『待人来ず』って書いてあった。今日のこの感じ、当たってる気がする」
「私は『さわりあり 来らず』だったわ」
「あ、じゃぁ来ないじゃん。結構当たるんだぜ、あそこのおみくじ」
「なら、今から行って『待人 来る』になるまで、おみくじ引いてみる?」
「…なるほど」
おみくじの有効期限が1年という決まりはない。むしろ、1年間「待人来ず」では約束を常にすっぽかされるという事態に陥りかねない。
「でも、今の時間って、やってるの?」
「元旦ならまだしも、1月も半ばではやっていないと思うわ」
「ダメじゃん」
カラン、とドアベルが鳴って、また一人帰っていった。
「でもまぁ、オレは運が良いし。おみくじもオレの運勢を占うには力不足だな」
「祟られるわよ」
笑って、時計を見る。
「それに、今日はまだ後2時間もある」
「えぇ、そうね」
とりあえずおかわりでも頼もうか。空になったグラスを指で弾く。
カラン、とドアベルが鳴った。
10/01/18
本郷先生お誕生日おめでとうございます。
本郷先生も出てこなければ誰一人として名前も出てきませんが、1月18日22時の会話。祝っている話でもない…。