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A CRIMINAL IS DDC


 予行訓練というのは、大切であると同時に退屈でもある。むろん、警察官のそれに退屈と言ってはいけないのだが、事実は事実だ。何度も同じことをやっていれば慣れが出てくる。余裕も出てくる。実際に事が起こった場合に、対応できなくなる。
 そこで、冗談半分に提案をしてみたのだ。「彼ら」に協力を仰いでみたら、と。


 その日、奇妙な緊張感に包まれた区域が騒がしくなったのは、14時過ぎだった。大通りを2本挟んだ建物ではそれより15分ほど前からだろう。
「あの」
 車に駆け寄り、窓を叩いてきたのは、若い警察官。焦っている。本郷が窓を開けると、もう一度「あの」と言い、一呼吸。
「すみませんが、おいで願いますか。多池警部補がお呼びなんですが」
 本郷と、助手席に座っていた片桐は顔を見合わせた。終結するには問題ない時間ではあるが、彼の態度からするとどうも違うようだ。

 若い警官に従って本郷と片桐がやってきたのは、とある銀行の警備室だった。そこには数名の銀行員と警備員、そして警察官。表情は皆、深刻ではあるが銀行員と警察官のそれには違いがあった。特に多池は苦虫を噛み潰したような顔をし、そして咎めるような視線と共に言った。
「犯人が逃亡しました」

 話は単純だ。13時40分頃、1人の男が拳銃を手に銀行に押し入り、1千万円を奪って逃げた。初期段階で成功した銀行強盗の見本のような事件だ。そこにDDCの探偵である本郷と片桐に出番はなく、普通であれば「通りすがり」に過ぎない2人に警官がやってくる話ではない。迷宮入りでもなければ、探偵が出るべき内容でもない。
 それがそうならなかったのは、これが銀行の防犯訓練であり、犯人役をDDCが担当しているという理由があった。


 話は4課の山口から来た。彼は開口一番「坊主向きの話があるんだが」と言った。この場合、坊主と言うのは七海で、しかし山口にとってDDCの窓口は本郷である。否応なしに「少なくとも2人は対象者だ」と言っているようなものだった。
 そこで聞かされたのが銀行の防犯訓練の協力。山口から来る話でもないし、DDCが介入する話でもない。まずお互いの上層部が許可しないだろう。
「それがなぁ、とんとん拍子に話が進んじまったんだ」
 あちらこちらに顔と融通が利く山口が発案したからかもしれないが。
「で、今回指揮するのは多池なんだが――知ってんだろ、あのインテリ」
「あぁ、あのメガネの警部補君」
 七海の口調がややぞんざいなものになる。それについて山口は気にとめた風もなく――そもそも山口の言い方が似たようなものだった。
「そいつがOKしたんだよ。まぁ上から言われたってのもあるんだけどな。なにせ肩書き主義だから。つまり、本人は納得していない可能性が高い」
 そういう山口は、肩書きは長い名字と同じと思っている節がある。どちらもどちらだが、当然、馬は合わないのだろう。
「てことは、余波はお前らにくるって事だよ」
 心してかかれ、と言いたいことだけ言って山口は去って行った。
 残された2人は、しばし無言のまま座っていた。


 犯人が逃走した。それで何故、この時点で自分達が呼ばれるのか。銀行側は一旦区切りがついたということにもなるだろうが、警察にとっては正念場――迅速な行動が求められる事態ではないのだろうか。確かに「何かあれば車で待機しているので」と言ったが――。
「犯人ですもの、逃亡しますよね?」
 片桐の何気ない確認に、多池は一瞬鼻白んだ。
「――防犯訓練はあくまで行内でのものだ。そもそもあんたらが行動計画表を――」
 そこで言葉に詰まる。そんなものはない。それが前提の訓練だ。


 団がOKを出した理由は簡潔だった。
「良い機会になるのではないかな――お互いに」
 いくらDDCが警察と協力体制を取っていても、公的機関の訓練に参加するという機会はそうはない。プラスになれこそすれ、マイナスにはならない――感情論は別として。警察と銀行が許可したのなら、拒む理由もないだろう。
「山口さんの言い方だと、何やってもOKって感じがしたけど」
「一般市民に必要以上の迷惑をかけなければ良いだろう」
「必要以上ってなんだよ」
「混雑している時は避けろということだ」
「あぁ、そういうこと」
 山口の話では、日にちと場所だけは決まっているという話だった。該当の銀行では前もって利用者に対し実施案内の張り紙を出す。犯行予告をする銀行強盗がいないわけではないだろうが、こちらの行動計画表を警察や銀行に出す必要はないらしい。
「事前に警官を配置するわけでもない――あぁ、混乱防止のための警官は置くのか。でも、訓練にはノータッチだから、最初の対応は銀行員ってことなんだよな」
 七海向けと山口が言ったのだから、七海が主として担当するのに異存はない。何より彼はこういう事が得意であり、好きでもある。
「せめて年収以上はいただきたいよなぁ」
 実に楽しそうな笑顔だった。


 山口の言葉を借りるのであれば、マンネリ化している防犯訓練を何とかしてほしい、という話だ。多池の言うとおり、今までの訓練は行内に犯人がいることを前提としたものだったのだろう。「事前情報があり警察官が潜入していた」事もあったはずだ。
 多池が口を開きかけた時、場違いに明るい声がかかった。
「よう、坊主がとうとう銀行強盗だってな」
 そう仕向けた発起人、山口だった。多池が少しひるむ。警部という肩書きか、署長も黙るマル暴の山口という通り名にだろうか。
 その間にも警備員は防犯カメラの映像の再生準備をしていたらしく、モニタに画面が映し出された。自然と皆の視線が集まる。客は3名。犯人はライダースーツからブーツ、手袋にいたるまで黒、鏡面加工の大きめのサングラスで、特に不審な動きもせずに窓口へ向かい、手にした拳銃を天井に向けて発砲――音声は録画されていないが、周囲の反応からしてそうなのだろう。僅かに硝煙も見える。サングラスで人相は分からないが、たとえサングラスがなかったとしても影響はない。どこかで見たことのある顔――ただしはっきりとは分からない、という顔をドクタードクロが作った。警察側が了承しているかは知らないが、フルフェイスのヘルメットと思えば問題ないのだろう。しかし。
「――誰だ、こいつ」
 山口の質問に警察官側から動揺の気配があった。
「七海じゃねぇよな」
「えっ」
 続けられた言葉に、多池が声を上げる。
「いくらなんでもヒョロすぎる。それに――あぁ、対応したのあんたか」
 犯人とやりとりをしていた行員を呼び寄せ、自分の身長と比較して頷く。
「そうだよな、この犯人は七海にしては身長が低い」
 本郷が頷く。
「――えぇ。七海ではありません」
 カメラの位置を考慮しても、さらにいくら七海が変装を得意としても、この格好でこれほど体型を変える不可能だ。その指摘に、多池は顔色を変えた。
「つまり、これは本物ということか――?!」
 緊急配備、と指示を出しかけた多池を止めたのは、またも山口だった。
「手配すんにも、どうすんだ?盗まれたのは何なんだ?」
 そういえば、なぜ山口がここにいるのだろう。本郷の視線に気がついたのか、山口はひらひらと手を振る。
「いやなに、ヒマだったんで昨日、偽札作りを手伝ってな。その出来の感想を聞きたかったんだがよ」
「出来?」
「新聞紙の束じゃ味気ないだろ。パッと見、それらしいもんが出来上がったんだけどな――ほれ、お札のメモ帳っての。百万円とか書かれてるやつ。あれだ、あれ。ちゃんと数えて帯びも巻いたんだ」
 カメラの映像を続ける。犯人はバッグを渡した相手とは別の行員に向かって銃を向けている。警報装置を押させないためだろう――幸いというか不幸と言うか別の場所にある警報装置のスイッチ付近には偶然にも人がいなかった。そして、犯人が差し出したバッグ――強盗をするにはというのもおかしいが、やけに小さい――を行員が受け取り、死角になった場所で入れているのだろう、一杯になって少し口をあけた状態でバッグを犯人に渡し、それを受け取り犯人は逃走した。その間1分半。
「早いな――がめつくなかったのが良かったんだろうが。だが、あの程度の隙間で、サングラス越しからじゃ、ヤツ、偽物って気がつかないんじゃないのか?」
 確かにこれは警察としては困った事態だ。訓練中に、訓練用の偽札が盗まれた。それだけなのだ。犯人が逃げたと本郷達のところに来たぐらいだから、訓練ごときで検問等の手配はできない――のかやるつもりがないのか――だろう。ただし、彼らの言うとおりであれば、公務執行妨害とでも何とでも理由はつけられるはずだ。
「最初から訓練に検問も入れときゃぁ良かったのにな」
 ニヤニヤしている山口に、多池はこちらを睨みつける。
 なるほど、と本郷は納得した。今から検問の配備を行うという事は、予行であれ本物であれ犯人に逃げられたと告白しているようなものだ。多池にとっては認めたくないことだろう。特に自分が直接現場で指揮監督をしているのならば。
「それで、あれが本物ならば、七海探偵はどうしたんですか」
「――もし犯人とはち合わせるなり見かけるなりしたなら、追っていると思いますが」
 多池の思考は分かりやすい。これで探偵が犯人を確保したとなったら、立つ瀬がない。本郷の答えを聞くなり、声を張り上げた。
「緊急配備だ!」


「フツーの訓練って、犯人は逃走していいもんだっけ?」
「知らん」
「でもまぁ、何やってもいいなら逃げてもいいんだよな」
 だったら聞くな。
 山口が去った後の会議室がそのまま作戦会議室になり、七海は渡された資料の他に地図を広げ始めた。
「逃走するなら欲張るのは危険だよなぁ…時間もかかるし重くなるし。でも少なすぎてもやりがいがないし。1千万が妥当?」
 独り言のようで、半分は本郷に聞かせている。少なくとも計画時の「共犯」にはなっているのだ。犯人はDDCと分かり切っている以上、犯人としても人数が多くなることのリスク――情報の漏えい――を気にする必要もない。
「あとは誰を巻き込もうかなー誰か暇そうな人いないかなー。ドクロちゃんは絶対だし久しぶりに紫乃ちゃんもどうかな」
 暇という言葉から最も遠い人選。そう言う七海も、本郷と同じく書類の山ができていたはずだが。


 多池に追い出されるようにして銀行を後にした本郷と片桐は、ひとまず車のところへ戻った。何故か山口も一緒だ。探偵に予想外はつきものだが、片桐は少し困ったような、それでいて状況を楽しんでいるような口調で言った。
「こういう場合はどうするのかしら」
「なるようになるだろう。連絡は入れておく」
 携帯のイヤホンを耳に、本郷は山口に訊ねる。
「山口さんはどうなさるんですか」
「ヒマだからなぁ。お前らと多池の勝負を見届けたい気はあるんだが」
「勝負をしているつもりはありませんが」
「坊主が計画したことなら、勝負だろ。上には訓練にしか見えないだろうけど」
 片桐が苦笑し、本郷は答えずにリダイヤルを押す。
「――鬼首博士ですか――えぇ、その件について、どうやら逃走した犯人を七海が追っている話になっているらしく――はい、偽札は――はい、分かりました。では、そちらに向かいます」
「どんだけ力入れてんだ、お前ら」
 鬼首の名前に、山口は呆れたように言った。面識はなくとも名は知れているのだろう――どういう評価なのかはさておき。
 遠目に見て銀行は何ら異常がない。インフラに影響は出ていないから、やろうと思えば通常業務に戻れるのだろう――警察側がどういう動きをするかは分からないが。
「ひとまず我々も追う事にします」
「オレも同乗していいか?」
「構いませんが、仕事は大丈夫なんですか?」
「休みだ」
 後部座席のドアを開けた山口は、そこにある物に首をかしげる。
「なんじゃこりゃ」
「あぁ、ごめんなさい。ケーキなんですけど。どけますね」
 答えたのは片桐。なるほど、箱の上部には店名と賞味期限が――ご多分にもれず今日の日付で、当日中にお召し上がりくださいの注意付き――が書かれていた。
「この近くに有名なケーキ屋さんがあって、すぐに終わると思って先に買ってしまったんです。頼まれてもいましたし」
「大丈夫なのか?」
「多めに保冷剤をもらったので、大丈夫だと思います」
 そんな山口と片桐の会話をよそに、本郷はカーナビを操作する。いくつかの画面を経て、地図が現れた。そこには赤く点滅するマークが動いている。
「これは?」
「発信器です。逃亡した場合、これでルートが分かるようになっています」
「あぁ、そっか。あんまり変なところに逃げられても困るしな」
 そこで山口は首をかしげる。
「この状態は予想していなかったんだろ?じゃぁ、嬢ちゃんはどういうストーリーでもって早く終わると踏んでたんだ?」
 助手席に乗った片桐は振り返り、にこりと笑って言った。
「山口警部の言うように、これが勝負だとしたら、もちろん私達DDCが勝って終わり、ですわ」
「――言うねぇ」


「あ。ここ、例のケーキ屋があるところじゃん。ここ美味いんだよなぁ」
 地図を眺めていた七海が声を上げる。
「そうね。しばらく食べてないわ」
「時間あったら買いに行けないかねぇ」
 招集された片桐とドクタードクロも同意する。同意する場所が違うと思うのだが、この面子での雑談で3対1では本郷に分がない。ただ、各々そんなに時間をかけてはいられない。すぐに本題へ戻った。
「逃走手段は」
「バイク。車でもいいんだけど。車の方がいいかな、雨降ったら困るし。どちらにしよ、途中で乗り換えようか考え中」
「逃走ルートは」
「高速乗ろうかなと思ってる――ほら、あそこのSAって外からも入れるじゃん。何かあったら歩いて下に降りれるし」
 はーいはーい、と子供のように手を挙げたのはドクタードクロ。はい、ドクロちゃん、と七海は先生のように指さす。
「バイクはどうすんの?盗難車?」
「…はいくらなんでもダメだろうけど」
「ナンバープレートに偽造は?」
「…えーと、確認します」
 思わず丁寧語になったのは、ドクタードクロなら実際やりかねない、と思ったからだった。


「ところでどこへ向かってるんだ」
 高速に乗ってしばらく、山口が訊ねた。
「すぐそこのSAです。鬼首博士が待機していますから」
「お前らホント万全だな――ってことは、もともとこういうルートで逃げるつもりだったのか」
「いえ、そこはケースバイケースです。他にも待機している場所はありますから」
 ふうん、と山口は呟き、再び「さっきの話だが」と訊ねる。
「実際、坊主は変装するのにあれだけ体型を変えられるものなのか?」
「目的によっては。ただ、仕事に支障が出ないという前提を含みますが」
 太らせるのであればドクタードクロの『スーツ』がある故、すぐにでも体型は変えられるが、逆となると難しい。ある程度の時間が――七海であれば1週間ぐらいで変えることも可能だが――必要だし、骨格に因る部分はどうしようもない。もっとも、そこまでいかなくとも「なり変われる」のが七海であるのだが。
「確かに強盗やるのにヒョロヒョロはないよなぁ。ライダースーツが似合っていないにも程がある」
 山口が納得している間に、車はSAについた。発信器はここで止まったまま。
 ドクタードクロの車は建物の入り口に近い場所に停まっていた。窓を叩く。たこ焼きを食べていたドクタードクロは、ちょっと待ってね、とジェスチャーをしてから窓を開けた。
「お疲れさん。おや、後ろにいるのが噂の山口警部かい?」
「どうも、初めまして」
 ドクタードクロにどういう噂が入っているのかは知らないが、紹介する手間は省けたらしい。
「――鬼首博士、怪しい人物を見かけませんでしたか」
「私が一番怪しいというか、場違いだと思うけどねぇ」
 助手席に置いた――否、座らせてシートベルトまでしているエリザベスを撫でながら白衣の博士は言った。後ろでは山口の「あぁ」と納得している声。
「七海ちゃんにも教えたから、もーすぐ来ると思うけど。あ、あれがそうじゃない?」
 振り返れば見覚えのある車――と言ってもDDCで所有している車は一般的なものではあるが――が近づいてきた。そのまま、空いているスペースに停まる。すぐに七海が出てきた。
「おー、皆さんお揃いで。ていうか何で山口さんまでいるの?」
「ヒマだったからな。それよか、お前、その格好で強盗するつもりだったのか?」
 いつもの白いスーツ。七海は指で帽子を少し上げ、ニヤリと笑った。
「洒落てて良くない?」
「そりゃただの勘違いだろ」
 ばっさりと切られ、片桐が小さく吹き出す。緊急事態からは程遠い空気だ。七海は気を取り直して訊ねた。
「で、警察の動きは?」
 全員の視線が山口へ向かう。
「知らんよ。検問張ったにしても、オレらが通って来たときにはなかったしな」
「ていうか、山口さんは警察サイドじゃないの?」
「オレは休暇で、野次馬根性で来て、勝負の結果がどーなったか知りたいだけなんだがな」
「あぁ、そう」
 時計に目をやると、既に1時間が過ぎていた。七海は本郷を見やる。
「――緊急配備をしても、どっかに逃げられている時間ではあるよなぁ」
「そうだな」
「で、これは銀行の防犯訓練なんだよな」
「あぁ」
「ってことは、終わりで良いんじゃないか?」
「お前が決めればいいだろう」
「んじゃ、終わりー!お疲れさん」
「…おい?」
 七海と本郷の会話に、山口が眉をひそめる。
「あ、じゃぁ金は山口さんに預けるんで、警部補に返してくれないかなー」
「金って、ありゃどっかの誰かが持って――」
 片桐が乗ってきた車から袋を持ってきた。中にはケーキの箱。
「はい、どうぞ」
 ひんやりとした箱。上部には店名と今日の日付がスタンプされたシール。開けてみれば、そこに入っていたのは保冷剤と見覚えのあるメモ帳だった。
「どういう事だ?」
「ケーキはこっちの箱なんだよねぇ」
 ドクタードクロが、後部座席から箱を取り出す。シールは貼っていないが、同じ箱だった。開ければ保冷剤とケーキが6つ。
「は?」
 自分が相当間抜けな顔をしているのは分かっているが、どうしようもない。
「つまり、銀行に押し入って金を奪ったのはドクロちゃん。で、近くで待機していた本郷と紫乃ちゃんに金を渡して、ケーキを受け取る。2人はそのケーキ屋の別の箱――こないだ買って取っておいたんだけど――にお金を入れて今日買った証拠のシールを貼る。ドクロちゃんは車でここまできて、服を着替えると」
「もっともその前に上から白衣は着てたけどねぇ。あ、ちなみに全部トランクに入ってるよ。発信器も同じく。それにしてもライダースーツというのは着心地悪いねぇ…」
 七海の簡潔な説明とドクタードクロの補足説明に山口は開いた口がふさがらない。確かに研究者ならヒョロくても頷けるし、この男ならライダースーツも似合わないだろう――失礼な話ではあるが。
「え、てことは坊主は何やってたんだ?」
「オレ?計画立てて、待機。銀行内の様子を報告してたんだよ。人がいない時間を見計らわなきゃいけなかったし」
「どこにいたんだ?」
「客その1。椅子に座ってたじーさんがオレ」
「てことは実行犯は」
「だから、ドクロちゃん。正確には銀行入る前はオレで、金奪ったのがドクロちゃんで、銀行出た後は本郷と紫乃ちゃんにバトンタッチ」
 警察が勝手に実行犯は七海だと思い、体格の違う人物が映っていたから「本物の銀行強盗」と勘違いした、それだけのこと。山口はずっと「犯人」といたのだ。
「あぁ、それで嬢ちゃんは」
 振られて片桐はくすりと笑う。疑いもしなかったのだから。
「えぇ。ですから、私達の勝ちだと」
 続いて反対側にいた本郷に。
「でもお前はあの映像を見て――」
「七海ではない、とは言いましたが、DDCの人間ではない、とは言っていませんよ」
 本郷の表情はあくまで涼しげだ。山口はため息をつく。と同時に、これを知った多池がどういう対応をするか見てみたい気もした。いっそこの金をこっそりアイツの車に隠しておこうか――。
 考え込む山口を見て、七海がチッチッチと指を振る。
「犯人はDDCだって、こんな最大のヒントないだろ?」




11/12/4
あぶ刑事のユージとカオルが銀行強盗(訓練のはずがそのままトンズラ)しているシーンを思い出して、DDCでやってみたいなーと思ったら何故かこうなりました。ドクロちゃんは普段籠っている感じがするので、こういうのは凄く楽しみそう





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