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MY CHOICE MAY BE NOT FOR YOU


「えーと…あれ、これいくらだっけ?」
 いろとりどりのお菓子を小さなかご一杯に詰めこんで、キュウは指を折りながら合計金額を出そうとしていた。一つ一つはそんな金額ではないからと、上限の2000円ぎりぎりまで買おうとしたはいいが、いざレジに持っていこうとして、不安になったらしい。
「…こういう時、メグとカズマがいてくれたら楽なんだけどなぁ」
 しかし、自分が何を買うかは、2人には――リュウやキンタにも、秘密なのだ。分かってしまったら面白くないし、意味もない。


「クリスマスパーティー?」
「うん、そう。そんなパーティーってものじゃなくても、皆でやらない?」
 キュウの提案に、リュウはきょとんとした顔で返す。
「ケーキとちょっとしたご馳走と、プレゼント交換。今年はお母さんの仕事の〆切が26日でさ、家じゃできなさそうだし」
「24日はバイトも書き入れ時だからなぁ」
「別に25日でもいいじゃん。やろうよ!」
「でも、おもしろそうじゃない。私もやりたい!」
「僕も25日なら平気だけど。料理なら用意できるし――なんなら僕の家でやる?」
「まぁ、25日の夕方なら大丈夫か。リュウ、オメーは?」
「え?僕は平気だけど…」
「じゃぁ、決まり!やろう!」


 冷静に考えてみると。自分は高校生で、最年少は小学校5年生。3人は中学3年生。この面子でプレゼント交換、というのは難しい気もする。何を選べばいいのだろう。リュウはさっぱり見当がつかないし、カズマは可愛げがないし、メグは女の子だ。
「キュウが一番喜びそうなのは、食いもんだってわかるんだけどなぁ」
 ひとりごちながら、階段を上る。案内板をざっとみても、ここは自分と縁がない。
「ただいま、文字入れ無料サービスを行っています。ご利用ください」
 自分と大して年の変わらなそうな店員のにこやかな声に、足を止める。彼女の前には、様々な形が光を放って並んでいる。どれもシンプルな銀色だ。
「文字入れってすぐに出来るの?」
「えぇ。10文字までなら、無料で」
 10文字。自分が唯一といってもいい、覚えている単語は9文字。学校の友人には、小学生が分かるものが分からなくて、何でそんな単語を知ってるんだと笑われた。
「じゃぁ――」
 クロスを手に取る。これなら誰が持ってもおかしくないだろう。ペンダントトップにもなるし、ストラップにつける事だって出来る。ふと、目線を移す。リーフ型のトップ。
「ちなみにこれ、地方発送とかって――」
「承っておりますよ」
 せっかくなのだから、あの2人にも何かあげよう。多分、届いたら速攻電話がかかってくるだろう。どういう風の吹き回しか、と。


 同性の友達となら、そんなに悩む必要はない。今は、かわいくて手ごろなコスメも一杯あるし、キャラクターグッズだって買える。でも男の子って何が欲しいのかしら?キュウやキンタは花より団子だからわかりやすいけど。カズマとリュウ君は、言い方は悪いけど、一般とずれている気がするし。誰に当たっても、喜んで貰えそうなもの。メグは今まで見てきた商品を頭の中で並べる。どれも当てはまりそうにない。階を移動しよう。
 階段に向かおうとして、漂ってきた甘い香りに振り向く。年中並んでいるものだけど、この時期専用に趣向を凝らしたディスプレイ。おなじクリスマスでも、にぎやかなパーティーコーナと違って、落ち着いていて、幻想的な雰囲気が支配している空間。香りから連想される名前と色。名前から色と香りが決まったのかもしれない。形はシンプルなものから凝ったものまで。ゆらゆらと揺れる灯が、儚げで。
「――あの2人にも、たまには団子より花というのも、いいわよね」
 そう、プレゼント交換なのだから。誰に当たるか分からないのなら、自分らしさが出ればいい。


 2000円といわれると、意外に見つからないものだ。普段、いかに自分が値段に無頓着だったかが分かる。キュウ君とキンタならお菓子で十分。ちょっとおしゃれなチョコレートとかだったら、メグちゃんだって喜ぶだろう。でもリュウ君は?クリスマスパーティーの話が出た時の表情を思い浮かべる。たぶん、どんなものか想像つかなかったのだと思う。僕だってやったことあるのに。
「つくづく、謎だよなぁ、リュウ君って」
 さて、どうしよう。無意識に足を運んだのは、あちらこちらで電子音が鳴り響き、画面の中では幾何学的な模様がせわしなく動く場所。こんな所で2000円の予算というのは無理だ。
「これがいい!」
 突然聞こえた声に驚いて顔を上げる。自分と同い年ぐらいの少女と、おそらくその子の両親。彼女が指差しているもの。悩みなんかなさそうな顔をした、おそらくこの世には生存していないであろうもの。『ヒーリングコーナー』というプレートがかかっている。
 ――そうだ。いつも小学生らしくないとか可愛げがないというのなら。多分喜ぶのはメグちゃんぐらいだろうけど。親子が離れた棚に近づく。やわらかな手触りの中から、ピンクを選んでみる。ぎりぎり予算内。どうか、キンタに当たりますように。


 プレゼント交換といっても、人数分買ってそれぞれに渡すのではなく、各自1つずつ用意して、輪になって音楽に合わせて回していく。帰り際、キュウに説明されてもピンとこなかった。アメリカでは違うの?と聞かれても答える術はない。行事という行事は縁がなかったのだから。
 誰に渡るか分からないのならば、誰にでも喜ばれそうなものを選べばいいのだろうか。となると、真っ先に思い浮かぶのは菓子類。でもきっと、これはキュウが買いそうな気がする。
 この時期、店先にはクリスマス商品と一緒に年末・お正月用品も並ぶ。
「へぇ…」
 カレンダーにも、こんなに種類があるんだ。そうだ、クリスマスプレゼントに、キュウのお母さんにカレンダーなんてどうだろう。デザインも良くてスケジュールを書きこむのに適していて。天井からぶら下がっている壁掛け用を眺めながら、ふと目線を移した棚の上。キャンバスをモチーフにした卓上カレンダー。月めくりだけど、カレンダーの部分は横4分の1ぐらい。残りはクリアファイル。『毎月好きな写真を入れて、オリジナルカレンダーを作ろう』というキャッチコピーがついている通り、サンプルには最初の月だけだに写真が入っている。
「写真、か」
 書類上必要な写真以外に撮った記憶がない。あぁ、夏にキュウが撮った心霊写真みたいなのがあったっけ。だけど――これから増える事はあるだろうか。これをプレゼントにしたら、12枚の中に、1枚でも自分が入っている写真が選ばれる事はあるだろうか。


「2505円になります」
「え?」
 あれだけ何度も計算しなおしたのに。どれか減らさないと駄目か。でもどれも捨てがたいんだけどなぁ。
 真剣に悩むキュウに、レジ係りの女性が声をかける。
「あの――こちらのカゴも商品になっておりますが…」
「え?そうなんですか?じゃぁ、このカゴはいいです。お菓子だけで」
 女性は微かに笑って、レジを打ち直す。
「1980円になります」




041212
本当は、クリスマスの日に、Qクラスでクリスマスパーティーの話を書こうとしたものの、思いつかずでこの程度です。
プレゼントを選ぶ基準として@自分が欲しいものを考えずに買うA相手が欲しいものを真面目に考えるBウケを狙う意味で変なものを買うC愛のある嫌がらせD誰に当たっても無難なもの
キンタは結構に真面目に考えそうかなと。あまり考えてないけど(ぉぃ。カズマはBとCかな(笑)。キュウは間違いなく@だと思うし。メグは@とAの間みたいな感じで。リュウは…AとDかなぁ



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