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4.怒られた…。


 救急箱を、と言って入ってくるのは、大概、七海だ。正確に言うと、片桐が引き連れてやってくる。だが、今日はその引き連れてくる相手が違った。
「どうしたんだい」
 絆創膏を渡しながら、連城は尋ねる。額に小さな傷がある。
「鳥に突かれました」
 少々憮然として答えたのは、本郷。
「鳥?」
「校舎の周りにある木に、鳥が巣を作ったんです」
 片桐が指差したのは、その中でも一際太く高い1本。
「雛が落ちていたので巣に戻したら、ちょうど戻ってきた親鳥が」
「あぁ、『略奪者』と思われたんだね」
 それは運が悪い。
「ぼうっとしていたのがいけなかったのかもしれませんが」
「そういえば、しばらく降りてこなかったわね」
「へぇ。何か、あったのかい?」
 彼がぼうっとしているとは。だが、その問いに本郷は答えをはぐらかすかのように、少し笑みを浮かべて言った。
「明日も、今日と同じような天気らしいですね」
 晴れ後夕立、そしてまた快晴。


 翌日。連城は木の下に立っていた。やはり、先の「らしくない」本郷の発言は気になってしまう。見上げれば、随分と高い場所に巣らしいものが見える。あそこまで登っていったというのか。落ちたら骨折ぐらいはしかねない。雛は運が良かったのだろう。
 注意しながら枝を掴んでいく。雨上がり、足元は滑りやすい。同じような天気、ということは、それが何かのヒントかと、夕立の後を選んでやってきたのだ。
 急に、視界が開けた。下から見れば枝が茂っているだけだが、偶然にもそれらがまったくない箇所があった。巣よりもいくらか下の場所。
「あぁ――」
 そこから見えたものは、虹だった。校舎の周りの木は高く、低い位置にある虹は中々、お目にかかれない。濡れた枝葉の匂い、時折落ちる雫。街中にある虹なのに、森の中で見ているようだ。


 突然、頭上でバタバタと音がする。
「あ」
 見上げるや否や、額に鋭い一撃。そういえば、そもそも本郷はこれで講師室に来たという事を失念していた。
 親鳥は、去ろうとしない連城になおも攻撃を仕掛けようとする。
「ごめんごめん、下りるから」
 足を滑らし慌ててしがみつく。冷や汗が出てきた。頭上の羽音は消えていない。


「あれ?先生、どうしたの?」
 額に絆創膏を貼った連城に、七海は当然の疑問を口にする。そんな本人は今日もまた擦り傷を作ってきているわけだが。そういえば昨日は本郷が怪我してたよなぁ。アイツも理由教えてくれなかったけど。思い出すように首をかしげる七海に、連城もまた笑って答える。
「夕立後の木登りは気をつけたほうがいいね。鳥の巣にもね」
「…はぁ?」
 先生、木登りなんかするの?心底意外だと言わんばかりの生徒に、授業が始まるよ、と教室へ追い立てる。素直に言わなかった本郷の気持ちが、少し分かるような気がした。




07/07/07
「YOU LOOK IT」とセットで。
本郷君は木登りしなさそうだなーと。連城先生はしそうですが、絵としてあまり浮かびません。





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