TOPcreationDDS一期生で三十のお題 > 26.ありえない真相



26.ありえない真相


「あら。七海君、何をやっているの?それ、何?」
 残暑もやや収まりを見せた日曜日。机の上に紙を広げて、手を動かしていた七海に、片桐が声をかける。続いて教室に入ってきた本郷も、紙を覗き込む。
「コード表か」
「そう。文化祭でさ、バンドやろうって話になってさ」
「そういえば、そんな時期ね。本郷君のところも?」
「お前んトコって、何やんの?有志?」
 同じ公立でも、学校によって内容はさまざま。七海の学校は、クラスごとではあるが有志もかなりの数で、この時期は勉強よりも準備に追われている。
「有志と部活、委員会。それでも、かなりの数になる」
「私のところは、クラス毎よ。そうだ、招待券、いる?」
「そっか、私立女子高はそういうところ、多いもんな。そうだな、後学のためにも行ってみようかな」
「…後学?」
 思わず眉をひそめた2人に、上手い言葉が見つからなくて――女子高生に変装した場合の事を考えと思ったのだが誤解を招かず言う自信がなく――七海は小さく万歳をした。
「すんません単に行きたいだけです」
「素直にそう言えば良いのに。本郷君は?」
 七海の心境など知らずに、片桐は本郷にも聞く。
「日程が重ならなければな」
 時期が来れば、毎週末どこかの学校で文化祭が開かれる。当然、重なることも多い。
「へ?部活は関係ないだろ?有志で出るのか?」
 そういうイベントには興味なさそうなのにと、七海は驚いた。
「いや、実行委員に引っ張り出された」
「…そりゃまたお似合いだ」
 七海は練習に戻る事にした。
「でも、七海君が音楽やるなんて知らなかったわ」
「いや、初めてだよ。だから、今、練習中。何せメインのエレキとボーカルだし」
「…初めてで?」
「やるなら主役。オレのポリシー」
 無意味に胸を張って答える七海に、片桐が、そういえば、と視線を上に上げる。
「先生たちも楽器をやるらしいのよ。前に聞いたんだけど」
「へぇ、意外。何やんの?」
「団先生はバイオリンと」
「ま、そんなイメージはありそうでなさそうでありそうだもんな」
「と、ということは、他にもあるのか」
「三味線を、小さい頃に習っていたそうよ」
「三味線?!」
 噴出した七海は、そのままゲラゲラと腹を抱えて笑い始めた。
「極端だな!じゃぁ、連城先生は?フルートとリコーダーとか、言わないよな?」
「違うけど…なんだったかしら」
 名前が出てこないのよね。片桐は腕を組んで思い出そうと目を閉じた。
「三味線かぁ。バンドには入れられないよな。ベースとかだったら、面白いんだけど。オレがボーカルとエレキ、お前がドラム、紫乃ちゃんキーボード、団先生がベース。連城先生は…イメージわかないから照明をやってもらって、DDSバンドってどう?」
 照明はバンドメンバーに入るのか。思わず心の中で本郷はツッコミを入れる。しかし、確かに連城と楽器が結びつかない。団と同じくクラシックだろうか。そこへ、片桐が、ポン、と手を叩く。
「あ!そう、アルプホルンよ!」
「ある…?何?」
「アルプホルン。連城先生が得意な楽器」
「…アルプホルンって」
 本郷が腕を使ってジェスチャーをする。そうそれ、と頷いてから、片桐は、連城先生がそうおっしゃったのよ、と念を押した。
「なぁ、なにそれ?ホルンって、あのカタツムリみたいな?」
「…どちらかというと、ラッパに近いのかしら」
「スイスの民族楽器だ。昔は、情報伝達手段に使われていたらしい。確か3m以上ある、長い筒状の」
「…を何で連城先生が出来るの?」
「…さぁ」
 実は民族楽器のコレクターだとか。実はヨーロッパ出身だとか。単に騙されてんじゃねぇの?あれこれ無駄な推測をしているうちに、授業開始の時間になった。
「…どうかしたのかい、3人とも」
 生徒が何やら探るように見ているのは分かるが、その理由が、連城には分からなかった。




07/03/11
世代が変わろうともDDSの生徒にとって講師陣は謎の人物ではないかと。連城先生は民族楽器やっていたら面白いなというだけです。本郷君こそ楽器が思いつきませんが。





TOPcreationDDS一期生で三十のお題 > 26.ありえない真相