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10.先生に質問


「オハヨウ」
 かけられた声に、片桐は返事をしながら振り返り、あら、と声を上げる。
「今の、七海君?」
「いや、コイツ」
 七海の手には、鳥かご。その中にいるのは黒い鳥。
「九官鳥ね」
「そ。ダチがこの土日で旅行に行くから、面倒見てくれないかって頼まれて」
 モノマネは九官鳥の十八番だ。
「でもまだ、おはよう、おやすみ、お帰り、ぐらいしか覚えてないのな。オレが面倒見ている間に、どれだけ覚えさせる事が出来るか。腕の見せ所だと思わない?」
「変な言葉を覚えなければいいけれど」
「ひどいこと言うなぁ、紫乃ちゃん」


「というのが、昨日の話」
 昨日は用事で休んだ本郷に、片桐は簡単に説明をする。教卓の上に置かれた鳥かご、その中の黒い鳥。本郷が入ってきた時に「オハヨウ」と言ったのが興味を引いたようだ。臨時の飼い主は、先ほど授業準備の手伝いに呼ばれて出て行った。
「何か言葉は覚えたのか」
「えぇ。いろいろと」
「センセイ、シツモン!」
 本郷の問いを待っていたのか、九官鳥は突然声を上げる。そして、キョロキョロと左右を見渡し、再び口を――嘴を開いた。
「ワカンネェ!」
 いくら物真似が得意であろうとも、同じ言葉を繰り返し聞かなければ無理だろう。つまり、この2フレーズを、七海は昨日の授業で多発したということか。思わず眉をひそめた本郷に、片桐は小さく笑って、庇うかのようにこう言った。
「別に、七海君は昨日の授業で、その発言をしていたわけじゃないのよ。質問は2回ぐらいしていたけれど。でも、授業が終わった後に連城先生を捕まえていたから」
 私は用事があったからすぐに帰ってしまったけれど。
 そういえば、最近、七海はよく居残りをする。時に強制的でもあるが、自発的も含まれる。もっとも、大概「家じゃ宿題やらないから」といういい訳つきだ。
「努力しているのよ、七海君も」
 確かに、とその点は認める。
「でも、そういう姿を見せたくないのよね」
 それはそれとしても。さっきから延々と喋り続ける言葉が、アリバイだの犯人だのシボスイテイ(死亡推定と思われる)だの、一般的な会話には出てこないものばかりというのもいかがなものか。
「七海君、飼い主にどう説明するのかしら。鳥が、こういう台詞ばかり喋っていることを」
「さぁな」
 昨日だけでどこまで進んだのか聞こうと教科書を取り出したとき、九官鳥は一際大きな声を上げた。

「ホンゴウノバカ」




07/03/23
七海君は本郷君の事を、本人がいないところでは「バカ」をつけて呼んでいそうな気も(本当に本郷先生ファンか怪しくなってきた)





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